ベルリンフィルとペトレンコがとにかく凄い

(2020/9/20)*1

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
キリル・ペトレンコ

アルバン・ベルク
ヴァイオリン協奏曲《ある天使の思い出に》
フランク・ペーター・ツィンマーマン(ヴァイオリン)

アントニン・ドヴォルザーク
交響曲第5番ヘ長調

前回のハーディングに続き、首席指揮者ペトレンコの指揮によるベルク。
ただ、前回の弦楽合奏版《抒情組曲》に比べ、このヴァイオリン協奏曲はチューバ、サックス、打楽器諸々を使った編成の大きな作品。この時期に演奏可能な作品としてはかなり大規模な方になるだろう。

《ある天使の思い出に》というのは副題というより献辞で、「ある天使」とはベルクと親交のあったアルマ・マーラーの娘のこと。この娘が早逝してしまったためにベルクは急遽この作品を完成させたと言われている。
ところが、この曲の完成後、ベルク本人も敗血症にかかって初演を待たずして亡くなってしまう。昔の話とはいえ、なんだか大変な背景を持った作品だ。

ソリストのツィンマーマンは近年ベルリンフィルとの共演が最も多いヴァイオリニストのひとり。オケとの信頼関係の厚さが窺える。アーカイブにも古典から現代音楽の初演まで幅広いプログラムが入っていて、今回も充実した演奏を聴かせてくれそう。

 

ドヴォルザークの交響曲第5番はというと、7~9番に比べ演奏機会の少ない作品。クラシックファンならみんな知ってる「のだめカンタービレ」にマイナーな作品として登場し、いきなり代役にされた千秋サマ、ちゃんと勉強しててスゲー、カッコいい、みたいになるための役割を果たした。

それもけっこう前の話、現実世界においてペトレンコはベルリンフィルとドヴォルザークの弦楽セレナーデやスークの交響曲第2番ハ短調《アスラエル》を取り上げていて、チェコ音楽の紹介に積極的に取り組んでいる。この交響曲第5番がスタンダード入りする日もいずれ来るのかもしれない。カリンニコフの1番なんてNAXOS盤の他は2種類くらいしかなかったのに流行ったからね。時代は変わるよ。

 

演奏はリラックスした雰囲気で始まった。

ベルクのヴァイオリン協奏曲、一楽章は音型はシンプルなものの難解な響きの音楽だったが、ソリスト、ツィンマーマンは堂々とした演奏で、表現に説得力を感じた。

打楽器はたくさん使う割に3人で、大小の銅鑼とシンバル付き大太鼓を入れた珍しい組み合わせ。音がとにかく超キレイ。スネアはドレスナーだろう。あの楽器は好きで、出番が楽しみになる。

デジタルコンサートホールはいつもカメラワークが素晴らしい。難しい曲でも聴きやすいように楽器の映し方をしてくれる。最近カメラのアングルもなんだか増えた気がする。

二楽章は混沌とした始まり方で、全体にモノローグのような感じ。空間に溶けていくように美しく終結した。この部分が祈りにあたるのだろうか。何度か聴いてみて味わってみたい曲だった。

 

協奏曲の後には今シーズンでは初となるソリストによるアンコールがあり、バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番の一部分が演奏された。晦渋な響きの協奏曲の後で、優しい響きに感じる。センスのある選曲。

 

何度かカーテンコールがあって、ドヴォルザークの5番へ。冒頭のおどけたキャラクターが美しく展開していく魅力的な曲だ。旋律と曲の運びを各楽器のソロに委ねるところがあって、平易な感じだがそれもまた聴きやすかった。リズムや組み合わせに常に工夫があって、多彩なアイディアが楽しい。最後の長いコーダでは金管のスーパープレイが炸裂した。

ティンパニはベンジャミン・フォースター、いつものように音楽性を持って確かな演奏を聴かせてくれた。今回はセーム皮のマレットを多く使用していて、また見事にオケにマッチしていた。今のところ毎回メインで使うマレットの傾向が異なる。引き出しの多い方なのだろう。

それにしても、ペトレンコの指揮が凄い。この難解なプログラムでも、完全に曲に入っていて動きが自由、もう「いつも演奏してますよ」みたいな感じ。実際そんなに機会ないんじゃないかな。。どういう準備があれを可能にするんだろう?

陳腐な表現かもだけど、こちらが知らない作品でも、その魅力を最初から100%の状態で伝えてくれる素晴らしい音楽家なんだ、と改めて感じる演奏だった。

それに合わせるベルリンフィルも超人の集まりとしか言いようがない。このコンビの演奏はこれからも音楽ファンをワクワクさせてくれるだろう。

 

<2020/09/29追記>

アーカイブ入り!

 

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  • 発売日: 2020/09/29
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*1:デジタル・コンサートホールには一部有料のコンテンツが含まれます。視聴方法については公式HPをご確認ください。http://www.digitalconcerthall.com