(2020/10/18)*1
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
マルク・ミンコフスキ
ヨーゼフ・ハイドン
交響曲第59番イ長調《火》
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
バレエ音楽《プロメテウスの創造物》
マルク・ミンコフスキが久々のベルリン・フィル登場となる演奏会で、ベートーヴェン《プロメテウスの創造物》を指揮します。ミンコフスキからのメッセージをご覧ください!デジタル・コンサートホールでは、当日中継のほか、18日(日)日本時間20時から時間差で再配信します。https://t.co/pfRLk949YD pic.twitter.com/q8Qj2fbnW9
— ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (@BerlinPhilJapan) 2020年10月17日
今回のデジタルコンサートホール配信は、「火」に関係するプログラム。
けっこう前だが、これに近い試みはクラウディオ・アバドの時代にも行われている。
アバドはじめ、オケの顔ぶれが伝説級ですね。ライナー・ゼーガースの若い頃かあ。
人類に文化と闘争を与えたことで罰されるプロメテウス。
芸術上のテーマとして示唆に富んだ神話である。
今回のプログラムも、そんな内容…と思いきや、
このハイドンの59番は「火」というより「火事」がテーマの戯曲が基になっているらしい。しかも、本人の命名ではない(よくある)そうだ。
とにかく《プロメテウスの創造物》に合わせて選ばれた曲なのだろう。
私はハイドンにあまり詳しくないので、こういう機会に取り上げてくれるのはありがたい。聴いて損はないだろう。
後半の《プロメテウスの創造物》。タイトルはとても有名な曲なのだけれど、序曲のみが演奏されることが多く、その中身はよく知らない。
「バレエ」といったらチャイコフスキーの三大バレエくらいしか見たことないので、どんな感じか興味が湧くところだ。
今年はベートーヴェン・イヤーでもあることだし、こうして珍しい作品に触れられるのは楽しい。
指揮を務めるのはマルク・ミンコフスキ。
オーケストラ・アンサンブル・金沢のシェフでもあり、日本にも馴染みのある方だ。
古典に詳しく、小さめのオーケストラでも結果を出している。
今の状況で実現できる編成では、とても頼もしい音楽家だと言えるだろう。
コンサート前のインタビューでは、終始にこやかな表情で愉しそうに話す人だな、という印象を持った。まさに温厚といった感じ。
演奏会。今回は対抗配置。
ハイドンは全体に丸みのある、聴いていて落ち着く響きだ。強奏時には艶やかさが加わってとてもいい感じ。やっぱり色んな指揮者で聴いてみるのは楽しい。
4楽章には管楽器だけで演奏する主題があり、おそらく超絶技巧が炸裂した(上手いのでよく分からない)。キャラクターの明るい全4楽章だった。
後半は楽器を追加するだけなので、セッティング変更などもなく入れ替えのみ。
最後列はティンパニを中心に金管楽器をセパレートする形になった。
《プロメテウスの創造物》。有名な序曲から始まり、そのまま序奏へ続く。
ハイドンと比較するなら、楽器の追加ということもあるけれど、衝撃力のある鋭い響きが加わった印象だ。
ティンパニはベンジャミン・フォースター。かなり硬質なマレットを選択していた。
頭部が近い形状の中で使い分けていて、選択の確かさがスゴい。
様々な音楽が次々に奏でられていく。
チェロの技巧的なソロとか、けたたましいファンファーレなど、交響的作品では珍しいアイディアも出てきた。
中間で超盛り上がって完全に終わったかのような場面があったが、拍手とかはなかった。ベルリンフィルの聴衆は好きなところで拍手しがちだ。
終曲には交響曲第3番「英雄」に使われた主題がほとんどそのまま出てきて、違った展開をするのでおもしろい。というか「英雄」が後なのでこちらが元なのだけれど、とにかく展開のおもしろさを味わえる。
長大なバレエ作品らしく、カーテンコールは長め。
ミンコフスキは多くの奏者と例の肘をぶつけ合う挨拶をやり、ソリストを立たせ、大満足といった感じで演奏会を締めくくった。
《プロメテウスの創造物》、台本は残っていないそうなので、具体的な筋書きは分からない。まあ、ここでいう創造物とは火、文明なので、それを讃える内容なんだろうと想像する。
文明という火を最も上手く使った人間のひとり、ベートーヴェンが讃えるのだから、それは説得力があるというものだろう。
<2020/10/26追記>
アーカイブ入り!
*1:デジタル・コンサートホールには一部有料のコンテンツが含まれます。視聴方法については公式HPをご確認ください。http://www.digitalconcerthall.com