このコンサートで指揮を務めるのは、昨年のブザンソン国際指揮者コンクールを優勝し、今はキリル・ペトレンコのアシスタントを務める沖澤のどか。
日本人として今もっとも評価を高めている指揮者のひとりで、こうやってデジタルコンサートホールで拝見できることが嬉しい。
(2020/11/02)*1
ベルリン・フィル カラヤン・アカデミー
沖澤のどか
モーリス・ラヴェル
《マ・メール・ロワ》(マティアス・カウフマンによる編曲版)
カミーユ・サン=サーンス
《動物の謝肉祭》(ロリオのテキストによる)
ニーナ・ホス(語り), ルーカス・ユッセン(ピアノ), アルトゥール・ユッセン(ピアノ)
※このコンサートは無料で視聴できます
沖澤のどかへのインタビューは数多く見ることができる。
ベルリンフィルの公式HPだとこちら。
www.berliner-philharmoniker.de
芸大のインタビュー。こちらはペトレンコのアシスタントに決まる前。
当たりの激しい感じはないものの、真っ直ぐな印象を受ける。
虚飾なく、苦労したこともありのまま話すところに芯の強さを感じた。
オーケストラは、ベルリンフィルのアカデミー生たちによるもの。
このアカデミーのことはドキュメンタリーにもなっている。
これから世界中で活躍することになる人たちの集まりだ。
聞くところによると、アカデミー生の出番はオーケストラ正団員並みの演奏回数に達するケースもあるらしく、既にかなりの能力を求められている人たちだ。
あまり別のオーケストラだとか考える必要はないだろう。
《マ・メール・ロワ》はラヴェルの作品。
英訳すると「マザーグース」、童話集のような作品で、このようなファミリーコンサートでは人気のある曲だ。
《動物の謝肉祭》も同様に、音楽教室とか楽器紹介の入るような演奏会で鑑賞することが多い作品だ。こちらはサン=サーンスによる作曲。
どちらもフランス音楽である。
人気の高い音楽の組み合わせで構成されているプログラムだが、平易な聴こえ方に対して技術的難度が高く、演奏はかなり難しいと言っていいだろう。
ピアニストのユッセン兄弟も、かなりの有名人。
イケメン兄弟ピアニスト。情報量が多いコンサートだ。
BIOGRAPHY - アルトゥール&ルーカス・ユッセン | Arthur & Lucas Jussen - UNIVERSAL MUSIC JAPAN
コンサートはフィルハーモニー内のカンマームジークザールで行われた。
このホールは演奏者を取り囲む形で客席が並んでいる。今見ても斬新な形状だ。
動物を象った白いオブジェが、舞台の色んなところに並べられてステージを彩っている。
《マ・メール・ロワ》は今回の編曲ではオーケストラというより各楽器のソロで組み立てられていた。
骨格がしっかりした印象の音楽。特殊奏法の音色も明確で、こういうファンタジックな曲で感じやすい曖昧な感じはなかった。編成に合った演奏だと思う。
各楽器の演奏者はひとりずつだったものの、第5曲「妖精の園」では大きく盛り上がって終曲。
《動物の謝肉祭》では指揮は無く、ピアノ2台を向かい合わせての演奏。
さらに、語りが入る。
照明も暗さをうまく使った演出になっていて、総合的な舞台を作り上げていた。
ユッセン兄弟のピアノは、ハッキリして鋭い印象だ。
アクセントが小気味よく音楽に勢いを与える。
この曲でも各楽器ひとりずつだったが、曲がアンサンブルの集合体になっているから、指揮者も入らずに進んでいくのだろう。
ところどころ拍手や笑いを交え、楽しく演奏された。
アンコールは、ユッセン兄弟によるビゼー《子供の遊び》より12曲「ギャロップ」。
この二人だと連弾の曲が演奏できるのは面白い。
正直なところ、日本人としては沖澤さんの指揮をもう少し見たかったというのが本音だが、、こういう教育的プログラムにしっかりとコストをかけるベルリンフィルの姿勢は素晴らしいと思っている。
子供向けの作品だからこそ、見た目に分かりやすかったり、語りで説明することが効果を発揮する場合がある。そんな時にしっかり演出できる人的資源が豊富なんだろう。
そりゃ伝統も育まれますよね。
今日のメンバーにはぜひ今後も活躍してほしい。できたら、ベルリンフィルの配信に出てくれたら嬉しいところだ。
<2020/11/12追記>
アーカイブ入り!
*1:デジタル・コンサートホールには一部有料のコンテンツが含まれます。視聴方法については公式HPをご確認ください。http://www.digitalconcerthall.com