オーケストラばっかりやっている私だが例に漏れず初めは吹奏楽だったので、東京佼成という団体には親しみがある。今回は、同級生が出演することになったので招待券をいただいて聴きに行ってきた。
普門館が無くなって、池袋の東京芸術劇場で行われるようになった定期の最後の会だ。これまで6回あったうちの3回聴きにきているから、半分は来たことになる。
(2022/02/26)
飯森範親 東京佼成ウインドオーケストラ
東京芸術劇場 コンサートホール
献呈序曲/C.ウィリアムズ
アルメニアン・ダンス PartⅠ,Ⅱ/A.リード
喜色満海(きしょくうみにみつ)[TKWO委嘱作品・世界初演]/長生 淳
交響曲 第1番「アークエンジェルズ」/F.チェザリーニ
(詳しい曲目解説はリンク先でプログラムが落とせます)
3回とも、今まで広い普門館をホームにされていたこともあってか、東京芸術劇場の響く環境では大音量かつ「まろやか」で充足感のあるサウンドだった。6回目となる今回も妙な慣れなどは感じさせず、そのままのサウンドが維持されている。さすがは第一人者となる団体と思える堂々とした演奏だ。
曲もほとんどスタンダードで、まさに堂に入った表現という感じ。飯森の指揮はオーケストラの経験が豊富なだけあって表情の豊かさを演奏に与えていた。
喜色満海(きしょくうみにみつ)は初演作品。繊細な表情を持つ作品で、これからもっと掘り起こされてほしいと思える内容だ。作曲者も臨席だったようで、演奏後に客席に向けて拍手が起こっていたが、1階にいらしていたらしく2階の自席からは真下で見えなかった。
同級生が参加した上に招待券をいただいて、バイアスがかかっているのかもしれないが、吹奏楽の良さを改めて味わったような良い演奏会だったと思う。東京芸術劇場のシリーズは成功と言ってもいいだろう。
(ここからは演奏会とは離れます)
気にかかるのはむしろこれからのことで、東京佼成は今回の定期を最後に新体制へと変わるらしい。一般社団法人化して独立採算でやっていくようだ。次回からは、なかのZEROに会場が変わる。
定期の回数が年間6回から3回に変わることから、余裕を持ったスタートとはいかないのが現実的なところだろう。賛助会員の仕組みも始まったようだ。
この独立がうまくいくかどうかで、音楽業界はかなり変わってくると想像する。100万人と言われる吹奏楽人口にとって見本となる団体のことだ。もし立ち行かなくなったら、楽器を始めるきっかけがひとつ失われ、演奏人口が減ってメーカーが苦戦することになるだろう。全体の予算が減ると消耗品などの質が落ちたりメンテナンスの機会がなくなって、古い楽器などは壊れてしまうかもしれない。多くの指導者たちも指導を続けていくことが難しくなっていく。なにより、目指すものが無いのに教えるということが成立しないんではないか。
これは大げさなことを言っているが、学校吹奏楽というものを考えた場合、結果が出るとしたら3年以内に起こってしまうことなのは間違いない。
変な話、オーケストラはすぐには大きな影響を受けないのかもしれない。見本が海外にあるし、演奏人口が減ったとしてもすぐに聴衆が減るというものではないからだ。弦楽器という豊かなバックグラウンドも持っている。ただ、楽器メーカーの苦戦は影響してくるだろうし、管打楽器が精鋭揃いにできなくなるというのは長期的には考えられると思う。
コロナ禍で吹奏楽コンクールを経験しなかった学生も多い。そのまま楽器を置いてしまうこともあるだろう。個人の選択としてはまったく問題ないけど、演奏者側に身を置いている人なら、なるべく多くの人が残ってほしいと思うはずだ。自分自身、新しい人が入ってこない趣味を続けていくのはちょっと気が引けるものがある。そういった意味でも東京佼成の新体制の成功を祈っている。
招待券もいいけど、定期会員を検討しようかな。