月曜19時の開催で行けるか分からなかったが、折り合いがついたところで平日の音楽鑑賞へ。東京佼成。連続で定期を聴くのは楽しい。
今回は新体制、つまり一般社団法人として独立採算での活動がスタートする回だ。ホールも東京芸術劇場から、なかのZEROホールに移っての開催となる。
この辺のことは前回色々書いた。
いちおう楽器を趣味にする人間のひとりとして、心配から色々なことを書いているが、ホールに来てみたら杞憂であったと分かった。お客さんはかなり入っているし、年齢層が幅広い。特に学生が集合してホールに入っていく姿など、数年ぶりに見たような気分がする。これは嬉しかった。
【特別企画】「マエストロVISIT」キャンペーン|ニュース東京佼成ウインドオーケストラ Tokyo Kosei Wind Orchestra
これには具体的な施策を打っていたようで、先を見据えた活動に好感が持てる。
顔を知っている若手プロティンパニ奏者の姿も見つけ、各方面から愛されている団体なのだな、という風に感じることができた。
(2022/04/25)
大井剛史 東京佼成ウインドオーケストラ
なかのZERO 大ホール
希望の彼方へ/P.スパーク
Sparkling for Wind Orchestra/冷水乃栄流
交響曲 第4番/A.リード
交響曲「ワインダーク・シー」/J.マッキー
(詳しい曲目解説はリンク先でプログラムが落とせます)
【第158回定期演奏会 コンサートプログラム】訂正のお知らせ|ニュース東京佼成ウインドオーケストラ Tokyo Kosei Wind Orchestra
(一部訂正があるのでご確認ください)
まずホールが移ったことによる影響を書いておくと、なかのZEROは東京芸術劇場と比べて響くホールだと思う。残響時間を計ったら長いのではないか。
自席が演奏者とほぼ真正面にあったこともあるだろうけど、これによって響きが飽和して、音の分離が曖昧に聞こえる箇所があった。反面、後半の大音量でパワフルな曲では迫力があって満足感が高かった。
総じて変化はあったもののこれは特性の違いで、すぐに慣れるだろうことを思えば、中野という地域性を獲得したことはメリットなんだろうと考える。なかのZEROを本拠にしている団体って無かったからなあ。
前半、初めはスパークの作品。これは震災~そして新たな出発、というテーマで作られた作品で、当時よく演奏されていた「陽はまた昇る」が編曲なのに対しこちらは新作なんだそうだ。
ホールの初演奏曲であったため、サウンドに驚いてしまった時があったが、美しい演奏であったように思う。
次は気鋭の作曲家、冷水氏による新作。こちらは特殊奏法が多く使われており、音色の変化が気持ちの良い作品だった。近い音型が繰り返されることで繊細な音色の変化を楽しめる。
作曲者も臨席していて(けっこう近くにいらした)、演奏後は舞台に登りカーテンコール。若々しく身軽な動きで、見ていて清々しいものがあった。
さらに、リードの交響曲第4番。リードの交響曲は何度か取り上げられている。リードの作品で言うと組曲を拡大したような作品で、そんなに大規模ではないのが特徴といえばそうである。これは熟練の技といった感じ。現代曲を前に入れたのは正解だっただろう。全集を完成させ、音源を出してほしいと思う。
指揮者の大井氏について書いておくと、正指揮者なのでバンドはかなり慣れた様子であり、完全に当を得た演奏といった感じがした。実際のところ身振りはかなり大きく、確たる主張があるのだが、それをバンドが自分のものとして演奏する関係性になっていると思う。主張をすると勝ってしまうというのが世の常だが、このようにうまくいっているのを見ると相当な力量の指揮者なのだろう。定期は何度か聴いているが、一番アンサンブルの精度が高い指揮者であると感じている。
後半はマッキーによる交響曲「ワインダーク・シー」。全般を通して戦いとワインダークのイメージが貫く大作だ。一楽章からして「傲慢」といかつい。これがコンクールの自由曲として人気があるそうなんだけど…こんな大変なのやるんだ…時代変わったな…という感じ。
全体に打楽器が活躍する豪快なサウンドである。私個人としてはこういうの好きだし、なかのZEROの音響にはこういうパワフルな作品が合っているようにも思えた。
終演してホールを出たのが21時ごろ。少し遅めではあるが、学生たちには今後も聴きにきてほしいと思うし、私も来たいと思っている。東京佼成ウインドオーケストラの今後の活躍を期待する。船出としては快晴、順調といえる演奏会だった。