ぽんぽこ日記

演奏会とか打楽器のことなどを書いてます

N響,東響,演奏会に通った2023年9月〜10月

8月はオペラ三昧で、計6日間をピットに入って過ごした。意外にも「しばらく演奏会はいいかなぁ」とはならず、9月に入ったらむしろ土日が空いてしまって、結局コンサートを聴きに行くことにした。

まずはN響。

(2023/9/9)
ファビオ・ルイージ NHK交響楽団 第1989回 定期公演Aプログラム

R. シュトラウス/交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」作品28
R. シュトラウス/ブルレスケ ニ短調*
R. シュトラウス/交響的幻想曲「イタリアから」作品16

www.nhkso.or.jp

N響は毎年なんだかんだ聴きに来る機会があって、東京芸術劇場のシーズンも含めてそれなりに通っているかたちになる。今回はオールR. シュトラウスプログラムでオーケストラ的に魅力が高く、特に「ブルレスケ」はティンパニが活躍する作品なのだが実演の機会が少なくて、私としてはこれが見たくて来たのであった。

「ティル~」は今回の中では比較的演奏機会の多い作品で、当然ながら超精密な演奏だった。N響だから、と言ってしまえばそれまでなんだけど、あれだけ上手なティルを聴く機会は滅多にないんではないか。

「ブルレスケ」は「ティル~」と比較するとではあるが、少し手の内に入っていない部分があったような感じがあった。ただ、肝心のティンパニはスーパープレイと言えるほど良かったので、全体としての印象はとても良いものだった。

休憩の前にはピアニスト、マルティン・ヘルムヒェンによりソロのアンコールが入り、少し気分が変わる。コンサートの狙いとはズレてしまうが、このアンコールが無ければちょっとくどい印象になったかもしれない。オールR. シュトラウスというのはそれだけ複雑な作品が続くってことだ。

「イタリアから」はメインプログラムだが、最も若い時に書かれた作品。後年の複雑さは少なく明るい曲で、当時らしく印象派風の響きが用いられるなど工夫が凝らされている。演奏機会は少ないが、他の作曲家のイタリアものと比べても遜色ない内容になっていた。

カーテンコール

N響の演奏会に行くといつも充実感がある。NHKホールで他のオーケストラを聴くことは稀ということもあり、国内トップでありながら強い個性を持った団体だと思う。

ひと通り満足し、神南の焼き鳥屋に寄ってからこの日は帰った。

 

(2023/10/14)
ジョナサン・ノット 東京交響楽団 川崎定期演奏会 第93回

ドビュッシー/ノット編:交響的組曲 「ペレアスとメリザンド」
ヤナーチェク/グラゴル・ミサ(Paul Wingfieldによるユニヴァーサル版)

tokyosymphony.jp

9月の連休に沖縄旅行をして、ちょっと遊び過ぎたかな、と思っていたのだが、「グラゴル・ミサ」を聴いてみたくてミューザ川崎へ。

ノットおなじみのこだわりあるプログラム。ドビュッシーはオペラをノット自身が編曲した意欲作。グラゴル・ミサは、より複雑な原典版を採用したとのことだ。ノット監督はいつも作品同士の相性をとても気にしたプログラムを組み、成功させてきている。どちらも聴いたことのない作品だったが楽しみでしかなかった。

ドビュッシーの方は、やはり繊細な美しさが際立つ演奏で素晴らしかったが、少し手の内に入ってない感じがあった(同じこと言ってる)。また、これは日曜日のサントリーホールの方が、響きの質も含めて味わえたのかもしれない。どちらがいいということではないが、ミューザ川崎は響きの豊かさより明確な音響に強みを感じている。何階にいても弱音まで聴こえる明確さは強調できるが、この日のドビュッシーに関してはサントリーホールの角が取れた響きも聴いてみたかった。

で、「グラゴル・ミサ」。構成からして独特で、初めと最後に同じ楽章を持ってきている。オルフの「カルミナ・ブラーナ」と同じ、といえば伝わるだろうか。楽器編成も、ティンパニ3セット、合唱に独唱、オルガン、バンダにクラリネット3本、というかなり大掛かりな編成だが、ティンパニを同時に使うのは1つの楽章だけ、オルガンだけの楽章がある、など複雑な用法をしている。

相変わらず技量の高いオーケストラだと思う。もの凄いパワーのある作品で演奏もそれを良く実現したものであった。ただ、この作品に関しては何度か聴いてみた上で実演を聴くともっと楽しめるのかもしれない。自分の問題だが異形の作品に少し面食らってしまった。

カーテンコール

作品が珍しすぎるためか空席の目立つ公演だったものの、知り合いが5人くらいいた。ティンパニを多く使う作品だと稀にこういうことが起こる。そのうちのひとりと川崎で飲んでから帰宅した。

 

二つのコンサートを聴いて、オーケストラのカラーって全然違うんだなあ、と再確認。あと、もう東京ではどんな作品でも聴く機会あるね。新しく評価されていく作品が出てくる時代になりそう。