「黄金の20年代」第2弾。プログラムは、前回も演奏されたクルト・ヴァイルの交響曲に、ドイツの音楽大学に名前を遺すハンス・アイスラーの作品だ。
(2021/02/17)*1
オンライン・フェスティバル:黄金の20年代
カラヤン・アカデミー奨学生
マリー・ジャコー
ハンス・アイスラー
管弦楽のための組曲第3番《クーレ・ヴァムペ》
クルト・ヴァイル
ヴァイオリンと吹奏楽のための協奏曲
コリヤ・ブラッハー(ヴァイオリン)
クルト・ヴァイル
交響曲第2番
デジタル・コンサートホールでは、2月17日(日)日本時間20時からジャコー指揮カラヤン・アカデミーの演奏会を時間差再配信します。演目はアイスラーとヴァイル。ヴァイルのヴァイオリン協奏曲でソロを担当するC・ブラッハーからのメッセージをご覧ください!https://t.co/0hYTOj7gSF pic.twitter.com/gZ6XX7AzYW
— ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (@BerlinPhilJapan) 2021年2月16日
ナチュラルに日付が間違っている。そう、今回は水曜日配信というイレギュラーなのだ。
いつもは日曜日の4時にリアルタイムがあって、20時に日本再配信されている。4時は言わずもがなとして、日曜日の20時という時間は空けておきづらいものがある。緊急事態宣言下の今であっても、 何かやっていることが多い。
逆に平日だとどうなの、と言われると困るが、幸いにして仕事も予定通り終わり、いいタイミングで聴けた。定期的に平日の配信を行ってほしいものだ。
ハンス・アイスラー《クーレ・ヴァムペ》は、同名の映画音楽を基にした演奏会用の組曲で、映画音楽としては最初期のものに当たるだろう。
旋律のハッキリした分かりやすい音楽である。ヒンデミットの作品に近い響きだと感じた。編成も似ている。
サックスを伴う小編成のアンサンブルといった編成で、Es管クラリネットやシロフォンなど、明瞭な音のする楽器を多く使用している。当時の録音技術を鑑みたものだろうか。結果として、ジャズバンドのような編成になっているのは興味深い。
ヒンデミットでも出てくるが、この時代の打楽器群はドラムセットの分解であることが多い。当時はひとりで演奏していたのか、分けて複数人で演奏していたのか。また、どのような楽器を使っていたのか、気になるところである。
ここでインタビューを挿むのだが、回線が一瞬途切れてしまい、かなり焦った。。
クルト・ヴァイルの「ヴァイオリンと吹奏楽のための協奏曲」は、表題の通り吹奏楽にヴァイオリンソロを加えた、クラシック音楽にしてはかなり珍しい作品だ。
吹奏楽といっても、サックス群を欠いており、オーケストラの管楽アンサンブルに近い編成ではあるが、管楽器を中心とした響きは「まろやか」になり、ヴァイオリンが鋭い響きになって目立つ。このようにオーケストラ側をいじってソロを目立たせる手法はヒンデミットの《白鳥を焼く男》でも見られ、この1920年代はこういった工夫が盛んに行われたという風に見ることができる。
この演奏会の時期は、確か感染対策として編成を絞った作品を多く演奏していたのだっけ。いまや一部制限付きとはいえオペラも演奏され、ウィルス対策は進歩したと言っていいのだろうか。
音楽の方はというと、吹奏楽らしく明るい響きで聴きやすく、様々な仕掛けが楽しい作品である。だが、けっして分かりやすい作品ではなさそうだ。時代の雰囲気を反映してか混沌とした雰囲気がずっと続く。
クルト・ヴァイルの作曲環境は大きく時代の影響を受けていたらしく、政治によって活動が阻害されるようなことがあったようだ。純音楽としては次に演奏される「交響曲第2番」を最後に亡命、アメリカでは舞台向けの作品を作りつづけたという。
交響曲第2番は、私には他の作品とは大きく違うように感じられた。
標準的な2管編成で、明確なリズムの動機が展開していく、新しくはあるが伝統的な純音楽だ。旋律に酔いしれるような場面もあり、全体的にシンプルな分かりやすい内容になっている。全3楽章になっていて、最後はスケルツォかつフィナーレのような感じなので、構造的にも伝統的だ。
最後の純音楽作品でシンプルさに回帰し、亡命後はさらに分かりやすい舞台音楽の道に進んだヴァイルにとって、初期の作品群とどちらが自分らしかったのだろう。
だんだん自分のやりたい事が見えてきたということなら、なんだか明るい話で、いいなーと思う。
(2021/03/01追記)
アーカイブ入り!
*1:デジタル・コンサートホールには一部有料のコンテンツが含まれます。視聴方法については公式HPをご確認ください。http://www.digitalconcerthall.com