今回のベルリンフィル、デジタルコンサートホール配信は言わずと知れた名曲、ブルッフの協奏曲にブラームスのセレナーデ。
大編成が難しい時勢とはいえ魅力的なプログラムだ。
(2020/10/4)*1
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
マレク・ヤノフスキ
マックス・ブルッフ
ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調
ノア・ベンディックス=バルグリー(ヴァイオリン)
ヨハネス・ブラームス
セレナーデ第2番イ長調
ヤノフスキとベンディックス=バルグリーが、没後100年を迎えたブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番で共演します。ソリストからのメッセージをご覧ください。デジタル・コンサートホールでは、当日中継のほか、10月4日(日)日本時間20時から時間差で再配信します。https://t.co/ToqxbBycJr pic.twitter.com/ocpw4O1D1V
— ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (@BerlinPhilJapan) 2020年10月3日
ブルッフでソロを執るノア・ベンディックス=バルグリーは、ベルリンフィルの第1コンサートマスターのひとり。
国際的なキャリアを持ち、自作のカデンツを使用したり協奏曲も書くなど、作曲もする優れた音楽家だ。
デジタルコンサートホール内に彼のポートレートが公開されていた。字幕があって見やすい。
指揮のヤノフスキ。ドイツの歌劇場で叩き上げた本格派で、日本にもよく来ていたサヴァリッシュに師事していたそうだ。
主要なオーケストラのポストを歴任していて、ピッツバーグ響の音楽監督も務めている。ソリストとはここからの縁だろうか。
ブルッフのヴァイオリン協奏曲、この1番のみが有名で2番、3番があまり演奏されず、作曲者がキレ気味だったという風なことがWikipediaには書いてある。
これには当時、2番以降は演奏するのに譜面購入が必須になったことなども影響しているそうだが、確かに2番3番はまだ聴いたことがまだない。
興味は少しあるけど、なんだろう、こうして1番が繰り返し演奏されてて何の不満も感じないというのは正直ある。ちゃんと?内容もあるし、演奏者ごとの違いも楽しめる。いい曲だと思う。
何より、「3大」にも入らず、誰かの死などといった忌まわしい経緯もなく、難しすぎて拒否されたという伝説もない、このヴァイオリン協奏曲。それでも演奏され聴かれ続けているというのは、内容がちゃんと愛されている感じがして好感が持てる。
作曲にまつわる「挿話」は時として夾雑物。いちいち苦しまなくても音楽は感動するものであってほしいと私は思う。
ブラームスのセレナーデ第2番は、「ドイツ・レクイエム」で本格的な管弦楽作品デビューをする前に書かれた作品で、宮廷風の編成による室内楽だ。
なんとヴァイオリンが省かれている…。「ドイツ・レクイエム」でも冒頭の楽章がそうだし、意外と珍しいことをするのが若きブラームスだ。イメージ無いけどブラームスは若い時から高く評価された天才肌の作曲家。少々変わったところもあったに違いない。
私は初めて聴く曲だ。どういう演奏になるのか興味深い。
で、演奏会。
ブルッフのヴァイオリン協奏曲では、さすがにソリストも勝手知ったる舞台といった感じで、溌剌とした振る舞いを見せる。音楽づくりとしては、甘美さというより、スッキリして愉悦を感じる内容。
オーケストラはけっこう思い切り演奏していて、それでいて安定感のある伴奏だ。さすがベルリンフィル。なんとなくだけど、ソリストとのアンサンブルはどこかオペラのような印象を感じた。
ティンパニはベンジャミン・フォースター。締めるところをバッチリ決める。
曲の最後は盛大に。私はこの終わり方がけっこう好きだったりする。
多めのカーテンコールがあって、アンコールが演奏された。
曲はJ・S・バッハのBWV1001より第1曲「Adagio」(今回は字幕が出ました)。
厳粛な雰囲気の音楽に聴き入る。盛り上がった協奏曲とはギャップが感じられて、良い選曲だと感じた。
アンコールの後は珍しく全員退場した。椅子などを動かして舞台セッティングが変更された後、楽員が再入場。
ブラームスのセレナーデ第2番では、当然だがヴィオラがヴァイオリンの位置に来る配置。チューニングはヴィオラのトップが行う。
全5曲からなるこのセレナーデ。全体的に寛いだ雰囲気の音楽で、ヴァイオリンを使わないことで第2曲「Scherzo」にゴロゴロとした感じが出て面白い。
第3曲「Adagio」が折り返しのような役割を果たしていて、荒々しく演奏される場面があってハッとさせられる。穏やかな感じもあり、起伏の多い曲だ。
第4曲でまた寛いだ感じに戻り、最後の第5曲でチャーミングに終わる。
初めて聴いた曲、35分くらいか。楽しんで聴ける佳作だと思った。
いざどれか演奏会に行こうってなった時に、こういう曲は行く候補に挙がりづらい面がある。せっかく生演奏だからマーラーとか、ブラームスだったら交響曲聴きたい、好き、という風に考えがちだ。
そういう点からも、聴けて良かった演奏会だった。バルグリーには、ぜひまたソロを弾いてほしいと思う。
<2020/10/09追記>
アーカイブ入り!
*1:デジタル・コンサートホールには一部有料のコンテンツが含まれます。視聴方法については公式HPをご確認ください。http://www.digitalconcerthall.com